『だいじょうぶ。 ふたりの側にはみんながいる。』
このことばを届けるために、今日までやってきたんだ。
おふたりの笑顔やゲストのみなさんのあたたかい空気を見ていて確信したのです。
2021年5月、コロナ禍でお日延べが決まったのは、結婚式のわずか2週間ほど前。緊急事態宣言の発令をきっかけに、結婚式準備は一旦中断となりました。私自身も落胆の気持ちが隠せないほど悲しかったけれど、もっともっと悲しかったのはおふたりだとおもいます。
その後もなかなか情勢が変わらず、新婦さまのお仕事の関係もあり、お日延べの日も定まらないまま2022年の年が明けてしまいました。
私はずっとおふたりの意思が固まるまで‥と、おふたりからの連絡を待っていました。"結婚式はおふたりのもの"私がやりましょうと言うべきではない‥ずっとそう思いながらこの仕事を続けてきたからです。
そうして、やっと新郎さまからご連絡をいただいたときには「3月に家族だけで結婚式をします。その家族だけの結婚式を上嶋さんにお願いしたい。ごく近しい友人たちは沖縄にでも呼んで僕たちふたりとささやかにパーティをしてきます。」というものでした。
なんだか私は心がざわつきました。なぜなら、この結婚式は"みんなと一緒にやる"という景色がもうはっきりと見えていたから。
でも、おふたりの決断だから。きっといろいろな想いがあるなか、この決断をされたんだ。だから、これはこれで尊重しよう。私はおふたりのお気持ちを飲み込みました。そうして、また新たに準備に向けて打合せを再開した日。新郎さまの様子が少し違ったのです。
いつも前のめりに話を聞いてくださる新郎さまのご様子がおかしい。全然こちらを向いてくれない。そんな気がしました。けれど、沖縄でやるという意思はもう固まっている、と何度確認してもそんな雰囲気でそれ以上はつっこめませんでした。そして、私は家族だけの結婚式ができる場所を改めて探し始めました。
何個か候補が出て、ご提案したいとお打合せをした日、新郎さまの姿はありませんでした。
やっぱりおかしいな…
新婦さまに思い切ってお聞きしてみることに。
そうしてお聞きできたのは、新郎さまの『ほんとうはご友人もご親族もみんな一緒にやりたい』というお気持ち。私がなんとなく感じていた違和感は的中していました。だけれど私主動で軌道修正していいものだろうか…結婚式はおふたりのもの。数日間ぐるぐると悩んでいました。
そして、蔓延防止がまた発令されると聞いたある日、"やっぱりこのまま進めちゃだめだ!!"私は居ても立っても居られなくなりました。
新郎さまの営まれている居酒屋さんに明日飲みに伺います!!!と瞬間的に連絡を取っていました。
私の心の中にずっとつっかえていた"ほんとうに良いのかな…"をぶつけることにしたのです。
——
「ほんとうにご親族だけの結婚式でいいんですか?沖縄での結婚式のご準備は進められていますか?」
新郎さまは「全然進めていないです。でも、今からもともとのかたちでできますかね?」と。
「いや、もう、やりましょう!!やるって決めてやりましょう!!!もともとそのかたちでやりたいっておっしゃってたんだから。
私、ずっとこのままでいいのかなって引っかかってたんです。みんなとやりたいってあんなに楽しくお打合せしていた昨年のおふたりを
見てきて、やっぱりみんなとやるのがいいんじゃないかって‥!!」
私自身も自分で言っておきながら、こんな力強い言葉を発するとは思っていなかったくらいに、今までのもやもやを全部そのままぶつけたような言葉になっていました。
「……ほんとうは、背中押してほしかったんです。そのことばを待ってたんやとおもいます」
新郎さまからの言葉に、なんだか今までの自分を反省すると同時に、「私もそのことばが聞きたかった!!!」
そんな想いで溢れていました。
——
そうして開催意思が固まって1ヶ月半。1年前に挙げるはずだったときよりも規模を少し縮小し、コンセプトも少し調整し、改めて急ピッチで準備を進めてきました。
そして迎えた当日。
緊張しぃとおっしゃっていた新郎さまは確かに朝からずっと表情がかたい。そわそわと会場内を歩き回りながらご挨拶のことを考えていらっしゃる様子でした。
結婚式のプログラムを考えるなかで、コロナ禍で大勢が集まる機会も減っていて、最初はみんなの空気が固いんじゃないか、と予想していました。この感じがなんとなく私のなかで見えていたため、挙式は食事会のあとにするほうがいい という答えだけは先に出ていました。
まずは食事会でおふたりとゲストの気持ちをほぐし、そのあとに改めて挙式という場で今日のこの日の情景を目に焼き付けてほしい、この日の気持ちを心に刻んでほしいと想いを込めていました。
美味しいお料理と、ご家族ご親族そして、大切なお仕事関係のみなさまやご友人とのお食事会はとっても和やかな空気が流れていました。おふたりの表情も緩んでいて良い雰囲気。
そうしてパーティーも結びの時間に。ここからは大切なゲストの前で誓う「人前式」のじかん。
今日の日を迎えたことを人生になぞらえるようにおいたちから今までを順に追うように構成した人前式。
まずは『はじまりのことば』。
おふたりが生まれたことへの感謝を込めて、ご両家お母さまへ感謝のことばと花束の贈呈をされました。
新郎さま。いろいろな想いが込み上げる中、一生懸命にありがとうの気持ちを伝えられました。
続いて新婦さま。照れくさいから手紙は読みませんとおっしゃっていたけれど、しっかりと自分のことばで感謝の想いを伝えられました。
人前式中、気持ちが溢れて、涙が止まらない新郎さまをニコニコ気丈に涙を拭ってあげている新婦さま。ふだんのおふたりの様子が表れたようで会場内が笑いに包まれます。
そして、『誓いのことば』。おふたりの誓いのことばをいただくまえに、実はゲストのみなさんと、私たちスタッフとで、当日朝からサプライズのメッセージを集めていました。
みんなからの温かなメッセージを、司会者さんが語り掛けるようにおふたりに贈ってくださいました。
誓いのことばは会場内に「誓います!!」とおふたりの力強いことばが響き渡り、そこにいた全員が、おふたりの結婚への想いを見届けたのでした。
人前式がはじまってすぐから涙を流されていた新郎さまですが、みんなからのメッセージ、そして姪っ子さんからのことばでさらに涙が溢れ出しました。
「泣きすぎやろ!!」という親しみを込めたご友人からのヤジと見守るみんなの笑い声。嬉しくて、嬉しくて、胸がいっぱいになる。
私たちスタッフも涙を堪えるのに必死だったほど、おめでとうに包まれたあたたかい時間でした。
そして、ゲストのみなさんと一緒につくった世界にひとつだけの【いろどりボード】を完成させ、おふたりからゲストのみなさまへの感謝のことばで挙式は結びました。
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コロナがあったから。コロナのせいで。そんな気持ちを引きずったまま、この先の結婚生活を迎えてほしくなかった。
コロナがあったけれど、ちゃんと向き合ってよかった。そう言ってもらえるくらいの時間にしたかった。
だって、コロナがあろうとなかろうと私たちの人生はずっと続いているのだから。
ぽっかり穴の空いた空白の2年間なんじゃなくて、その2年の中にも日常があって、ちゃんといまに繋がっている。
そして、これだけのひとに支えられているんだから自分たちはこれから先なにがあっても大丈夫。
そう思える1日を想像して一緒に準備を進めてきました。
それがちゃんとかたちになった、それがなによりもうれしくて、ずっとずーーっと見ていたい光景でした。
▼クリックしていただくとこの結婚式の動画(Youtubeリンク)をご覧いただくことができます
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結びに。このコロナ禍の中、お日延べをずっと見守ってくださっていたいつものねいろメンバー、
蔓延防止が明けるかどうか分からない不安定な情勢のなか、心強いサポートをくださったBARMANEさんや司会者さんはじめ、多くの関係者のみなさまにも最上級の感謝を申し上げます。いつもほんとうにありがとうございます。
Wedding Produce Neiro(ねいろ)
上嶋千絵
Place : もやし町家
Photo : Okuda Shun
Movie : Nody films
Flower: Maison U
Dress : ayumibridal
Hair Make : Hashimoto Tomomi
Attend support : Kumaki Shinobu
Catering: BARMANE
MC: Fujita Kyoko
PA: JHA
Movie BGM/Original song : Hanada Emi
その他、お日延べを迎えるまでの間にもたくさんたくさんご協力いただいたみなさま